“ワンチャン”、”ガチで”、”ヤバい”
20代のエンジニアたちの日本語は短い。
“特に「ヤバい」は、良い時も悪い時も使えて便利です!”
とのことだ。だけど、時には大人には通じないから注意だ。
先日、新宿駅で、アパレル系の美しい女性が、
“ねぇ、ワンチャンって何?”
と後輩の女性たちに聞いて、
“特に意味はありません!”
という答えに、とても困惑していた場面に遭遇した。ちゃんと「あり得なさそうな1回のチャンス」だと教えて欲しかった。
こんな日本語を使う学生も、英語に対しては貪欲なので、週に数回の米国企業とのオンラインミーティングには、一緒に参加してもらっている。
シリコンバレーやハワイのチームと、プロダクトを検討できる貴重な機会だ。
誰もが、グローバルで仕事ができる時代なのだから、プログラミング言語だけでなく、英語もがんばって欲しい。
実際、エンジニアは技術のことだけでは済まない。
ユーザが使いやすくするための、デザインにも、気を遣わないといけない。
先日、米国の人々にプレゼンする際に、20代エンジニアの男性が
「女性の写真が並んでいる画面」
を出すべきところで、
「USBケーブルが並んでいる写真」
を出してしまった。
時折、僕は注意する。
“サービスを使う人には「見てくれ」が大事なんだ!”
エンジニアは真剣な眼差しでうなづく。
だけど、なかなか簡単にはいくものではない。
そして、あるとき、彼は「質問があります」と言った。
「いいよ」と言うと、
“いつも使われてる「見てくれ」って言葉は、どういう意味ですか?”
と聞いてきた。
。。。僕は、日本の未来について、考えた。20代前半の若者が、僕が当たり前だと思っている日本語を、一度も使ったことがない事実に、直面している。
大人の責任だ。僕らが「MK5」とか「あげぽよ」とか「チョベリバ」とか使ってきたから、こんな日本になったのだろう。
ヤレヤレと思いながら、僕は伝えることにした。
“「見てくれ」というのは「見た目」のこと。人に伝えるときは「見た目」も大切ってことだよ”
大人としての一つの責任を果たし、僕は、すがすがしい気持ちになった。彼も美しい日本語を学び、次の世代に伝えていくに違いない。そう思っていると、彼は、すかさず言った。
“分かりました。僕らが普段「ビジュアル」って言っているやつですね!”
嬉しそうな彼の笑顔を見ながら、英語を学ばないといけないのは、誰なのか、分かった気がした。