国籍

“君はメジャーリーグで一番有名なアメリカ人を知ってるか?”

数年前、シリコンバレーの投資家が集まるパーティで、僕らは白人の投資家に、そう問われた。当時、僕はマリナーズのピアッツァくらいしか知らなかったから、そう答えた

彼は、首を横に振ってこう答えた。

“イチローだよ!”

僕は講演するときに、よく、この話をする。

イチローは日本人ではなく、アメリカ人だ。

米国の強みは、移民を受け入れて、アメリカ人として認識するところだ。

教育水準、技術水準を高め、優秀な移民を受け入れ、それまで自国ではできなかったことを達成し、成果物を自分たちのものにすること。そして、その心までも自分たちのものにしてしまうこと。

よくできたシステムだと思う。

もちろん、移民というのは、いいことばかりじゃない。

僕の祖父は米国で生まれた。1898年、曾祖父(ひいおじいさん)は、開国後の日本を飛び出し、アメリカンドリームを追いかけた。サンフランシスコ、L.A. に渡った後、現地でクリーニング屋を開業し、結婚して祖父が生まれた。

それから、太平洋戦争が始まると、多くの日本人は強制収容所に入れられ、残念なことになった。

“日本人と犬はお断り”

レストランで、こんな扱いのあった時代だ。当時、祖父は10歳の少年だった。収容所に入る直前に、何とか熊本に戻ることができ、父へ僕へと命がつながった。

だから、戦争で、移民が辛い思いをすることを理解している。精神的にも、生命の危機という意味でも。

そんなことを考えながら、僕はシリコンバレーから日本に戻ってから、日本にいながら事業のグローバル化を進めることを考えてきた。海外に行くのではなく、海外の人たちが会いに来てくれるような仕組みを創りたかった。

そして、数年前から、敢えて日本法人で、中国人、韓国人の方々を受け入れを徐々に進めている。アルバイトという立場ではあるものの、現在の業務の一部は、韓国、台湾などからもサポートしてもらっている。社内の公用語は日本語のまま、サービスは各国の言葉で進めて行く。

会社としても教育水準を世界最高レベルに高め、優秀な移民をたくさん受け入れ、彼らとともに世界最高のサービスを創り上げていきたい。

ちなみに、写真は、イチローのいたマリナーズ本拠地、港町シアトルで撮影したもの。